水分補給について

おはようございます、アスレティックトレーナーの青柳陽祐です。

今回は、NATAとIMMDAから発表されているスポーツ活動時の水分補給に関する基本方針表明(Position Statement)に内容を簡単にまとめ、その情報から以下の疑問について青柳なりに回答をしてみようと思います。

Q1.水分補給の適切なタイミングと量は?

Q2.ドリンクはどのくらいの濃さ・温度で飲めばいいのか?

Q3.のどが渇いたら飲むではダメですか?

*下記の数値は全て、短時間で息が切れる激しい運動または、運動時間が45分を超える場合の理想の摂取量です

水分補給のタイミングと量

さすがにこれはやりすぎですが...

さすがにこれはやりすぎですが…

A1.活動前・中・後に適量とる

活動前:開始の2〜3時間前に500〜600ml、10〜20分前に200〜300ml飲む

活動中:10〜20分毎に200〜300ml飲む

活動後:2時間以内に失った水分量を補給し、4〜6時間以内に活動2時間以内で尿や汗として排出した水分量の25〜50%を補給する。

一般的には、身体の水分量の1〜2%を失うと身体の機能に影響が及び、3%以上で熱中症のリスクが高くなるとされています。
しかし現実のスポーツ活動では、3%以上の水分喪失が起こる可能性は高いです。
スポーツ中の水分補給に目が行きがちですが、活動前・後も同じくらい重要です!
人によって発汗量が違うことは当たり前なので、普段から運動前後の体重変化を測定しておくことで、個人ごとに水分補給の注意を促せるようにしておくべきです。

*文献では発汗率を測る公式がありますが、一般的には前後の体重変化でも十分な指標になると青柳は考えています…

必要な水分は真水やスポーツドリンクから摂るべきですが、食事からの水分補給も重要です。
といっても、急に食習慣を変えることは難しいかも知れません…
そこで青柳がオススメするのが、活動前と後の食事メニューの一部をフルーツにすることです。
フルーツ類は全般的に消化・吸収がよく、必要な炭水化物(特に果糖)、活動中に失われやすいミネラル類や”身体機能の潤滑油”であるビタミン類を多く含んでいます。

ドリンクの濃度と温度

冷たい方がうまいでしょう!

A2.激しい運動をするときはそのままの濃さで飲み、必要に応じて水や塩も用意しておく。温度は10〜15℃(氷を入れたクーラーボックス・ジャグで冷やしておく)が理想的。

大まかに水分補給で気にするべき数値はこの3つです(100mlあたりの数字)

カロリー、炭水化物(ほぼ砂糖)、ナトリウム(Na:塩の主成分)

ポカリスエット http://www.otsuka.co.jp/product/pocarisweat/
カロリー 25kcal
炭水化物 6.2g (糖分濃度6.2%)
ナトリウム 49mg(塩分濃度0.49%)

アクエリアス http://www.cocacola.co.jp/brands/aquarius/aquarius01
カロリー 19kcal
炭水化物 4.7g(糖分濃度:4.7%)
ナトリウム 40mg(塩分濃度0.4%)

これらを見てみると以外にスポーツドリンクってカロリーが高いなと感じます…
運動以外で飲み過ぎると、糖分の摂り過ぎになってしまうので注意が必要です。

ここで、運動時の水分補給に使うドリンクのナトリウムと糖分濃度に着目します。
NATAが理想的とする数値は…

糖分濃度6.0%(100ml中6gの炭水化物)
塩分濃度0.03〜0.07%(100ml中0.03〜0.07gのナトリウム)

ポカリスエットとアクエリアスを比較すると、どちらもこの基準はクリアしています。
しかし一般的には、薄めて飲んだほうがいいと聞かれることが多いように思います。
理由の多くは、”味が甘すぎてすぐ喉が渇いた感じがする”というものです…

今回の文献では、自主的な水分補給を促すのには上記の糖分・塩分濃度が推奨されるとのことでしたが、もう一つ”Palatability”(口に含んだ感じ・うまさ)というものに着目しています。

例えば同じカルピスでも、割る水の温度によって味が違うように思えたり、濃い目・薄めが好きとか、その時の体調や気分によって全く違う飲み物になってしまうことがあります…
うまさというのは、人の舌・脳の働きで全く違うので、同じドリンクを用意しても、人によって摂取量はまちまちになってしまいます…

スポーツ時の水分補給は、ボトルからの場合が多いと思いますので、”そのままの濃さ〜2/3に薄めたもの”と、”真水”2種類のボトルを用意しておくのがいいと思います。
また場合によっては、普段のドリンクに塩(できればミネラル分を含んだ天然精製のもの)を少量加えてもOKです。
選手の好みや適量には多少の差がありますので、必要に応じて提供するドリンクも分けた方が無難でしょう…

のどの渇き

のどの渇きは無視できない...

のどの渇きは無視できない…

A3.運動以外では渇く前に飲んだほうがいい。しかし運動時では、状況によってのどが渇いたらすぐに水分補給できないと考えて対策を打つ。

IMMDAの文献では、喉の渇きは身体の水分量をリアルタイムでお知らせする重要な指標でほとんどの場合、喉の渇きを感じた時点で水分補給をすれば、水分不足・過多の状態は防ぐことができるとされています。

一番の安全策は、のどの渇きを感じる前に適量を摂り続けるのがベストで、運動以外の時間では、意識をしていればそれは十分可能だと思います。
しかしスポーツ中の時間の流れでは、渇きを覚えた時に直ちに水分補給が許されることは少ないと考えるのが現実的です。

対策として、Q1・2に書いてあるようなことをしたり、そもそもの熱中症や脱水症状が招く悪影響を教える、環境によって運動強度を変える、練習・試合中のウォータブレイクを計画的にとる、選手に尿の色を観察してもらう、など事前・事後の体調管理やその他対策が重要であると思います…

Updated Fluid Recommendation: Position Statement From the International Marathon Medical Directors Association (IMMDA)
http://www.aimsworldrunning.com/articles/IMMDA_Updated_Fluid_Recommendation.pdf

National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Fluid Replacement for Athletes
http://www.nata.org/sites/default/files/FluidReplacementsForAthletes.pdf

You may also like...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA