スポーツの役割って?

こんばんは、アスレティックトレーナーの青柳陽祐です。

今回は今月に読んだ2つの文献のうち、”成長期のスポーツ活動がもたらす精神的・社会的影響”について簡単にまとめて、それを読んで思ったことを素直に書いてみました。

今回の文献はこちらの2つです…

Sports Injuries in Young Athletes: Long-Term Outcome and Prevention Strategies http://www.researchgate.net/publication/45188690_Sports_injuries_in_young_athletes_long-term_outcome_and_prevention_strategies/file/e0b4952bd2b83749a3.pdf

A systematic review of the psychological and social benefits of participation in sport for children and adolescents: informing development of a conceptual model of health through sport
http://www.biomedcentral.com/content/pdf/1479-5868-10-98.pdf

子供のスポーツっていいの?

子供のスポーツってどうなの?

子供のスポーツってどうなの?

今回ご紹介する文献ではスポーツ活動を、”課外活動”、”チームスポーツ”、”学校の部活動・学校外のクラブスポーツ”、”活動の時間と頻度”、”スポーツ活動全般”の5つの観点で分析し、スポーツが成長期の精神・社会的健康もたらす影響についてまとめられていました。

ここで内容を簡潔にまとめてみると、下記のような成長期の子供に対する良い影響が見られました。

スポーツ活動での保護者以外の大人や同世代の友達との付き合いにより、社交性や集団での行動におけるルールが身につき、子どもの自己肯定感、感情のコントロールや勉強への取り組みにも好影響を与える。

チームスポーツは個人競技に比べて、『自分の存在が社会的に容認されている』というプラスの意識を子供により感じさせ、うつ病などの心の病、自殺衝動、摂食障害などを予防する上で効果的である場合が多い。

校内・校外でのスポーツ活動は、身体機能、心と身体の健康状態、幸福感や自尊心を高める効果がある。

スポーツ活動への参加頻度が高まると、精神や行動面での落ち着き、身体・精神面での自己評価においても良い結果が現れやすく、運動強度においては頻度ほど顕著な影響は現れない。

スポーツ活動への参加することは何も運動をしないことに比べて、自傷や自殺に関する考えや行動を抑える効果が高い。

内気な子供でもスポーツを通じて精神的ストレスが軽減され、社会的スキルや自尊心を身につけることができる。

この内容については青柳もほぼ賛同しています…

スポーツと健康

健康の定義(WHO)

健康の定義(WHO)

健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)

WHO(世界保健機関)の定義を知った上で健康について考えると青柳も含めて、『自分って本当に健康なのか?』と思う人がかなり多いような気がします。
スポーツ活動への参加は、思春期に健全な身体・精神を育む上でとても有効な手段ですが、運動が身体にとって総合的にポジティブまたはネガティブに影響を与えるかについて、現時点では明確にはなっていません…

一つの議論として、肉体・精神的に未熟な思春期の子供たちが単一のスポーツに集中することが良いか・悪いかというものがあります。
多くのスポーツ選手が将来的にプロになる過程で、早いうちから練習・トレーニングを開始している傾向にあると思われますが、『成長期のケガのリスク増大』や『スポーツ以外の勉強・学習機会の減少』といった指摘があります。
一方でスポーツ活動は総合的に見て、成長期の子供たちにとって良い影響を与えるという意見もあります。

この議論についての青柳は…

1.”スポーツをやるなら、成長期の間に様々なスポーツをやらせてあげるのがいい。あるスポーツでプロを目指すにしても、この過程は決して無駄にはならない!”

2.”確かに成長期のスポーツ活動は障害リスクを増大させるけど、青年期以降の生活に与える肉体・精神的なメリットは、活動しないデメリットに比べて明らかに大きい!”

3.”適切な指導者・保護者の介入が超重要!”

と考えています。

1の回答に対する見解:

単一のスポーツに集中しすぎるデメリットとして、スポーツ特有の動作を繰り返すことで身体へのストレスがある部分に偏ってしまうことが挙げられます。
偏った身体へのストレスは、成長期に多い骨端部の剥離骨折、骨端線離開や腰椎分離・すべり症などを誘発する可能性を高くしてしまいます。

一方で成長期に様々な動きを体験させるメリットは、使いすぎ障害の防止だけではなく、子どもたちの身体を動かす感覚を磨く上でもとても役に立ちます。
ヨガからラグビーまで、様々な運動をする老若男女を見てきましたが、上手な人・上達する人に共通しているのは、好奇心旺盛で色々なことをアタマで考えつつも、最終的にはカラダで自分の良い動きを感じることができるということです。

2の回答に対する見解:

どんなレベルや年代のスポーツでもケガのリスクは必ずあります。
あるスポーツでプロとしてお金をいただく事ができるようになる人はほんの一握りですが、ケガ、スランプやきつい練習を乗り越えた経験、チームメイトや指導者とのコミュニケーション、一つのことに全力を尽くして取り組んだ経験、全てはその子供が社会人になった時に活かされる場面があるものだと思います。

成長期・学生時代にスポーツを経験した人はそうでない人に比べて、青年期以降に新しくスポーツを始めても上達する可能性が高く、肉体・精神・社会的にも健康な生活習慣を選択しやすい傾向にあります。
社会人になるとデスクワークが増えて、身体の疲れが取れにくくなり、肩こり・腰痛・だるさを感じる方が多くなりますが、『仕事でのココロの行き詰まりを運動をすることでカラダから解きほぐしてゆく』、というのを無意識に実践している人も多いのではないでしょうか…

大人ができること

トレーナが担うところはたくさんあります!

トレーナが担うところはたくさんあります!

ここでは3に対する見解として、実際に指導者やトレーナーが子供たちの肉体・精神・社会的な健康を育む上でできることを考えてみました…

肉体的な健康:

可能な限りスポーツの指導資格を持つコーチが、成長期からスキル指導をしっかり行い、その子供に合った正しい動き方を教える。

トレーナーはコーチと連携しながら、正しいスポーツ動作を身につけさせるための身体の使い方を指導し、身体の使い方やケガに関して知るべきことを子供、コーチや保護者に教育して行く。

青柳は小学生のゴルファーの運動指導を行っていますが、傾向として下肢から上肢へと力を伝える身体の使い方が苦手な子供が多いような印象を受けています。
ゴルフスイングだけではなく、左右の体重移動や下から上への力の伝達を教えるのに、バドミントンのサーブ、バスケットボールのチェストパスや鏡拭きなど様々な動きを取り入れています…

大学のラグビー部のサポートも行っていますが、LINEをコミュニケーションツールに使ってケガのケア方法のシェアも行っています!

精神・社会的な健康:

子供のすることを頭ごなしに否定しない。社会的に相応しくない行動や態度が目立つときは適度に叱ったり、素直に話を聞くようにする。

子供がスポーツに熱中するあまり勉学をおろそかにしないような、保護者の指導や学校・部活動の仕組みづくりをする。

青柳は叱ることが苦手なので、ここに関しては現在進行形でいろいろな方法を模索し試しているところです…

学生は『学んで生きる』ものだと思っています。
古くから文武両道と言われていますが、これを実現する仕組みづくりに関しては、出来ていない学校・部活動が日本では多すぎるような気がします。
アメリカでは部活動に参加する学生に対してほぼ例外なく、『授業にしっかり出席する』&『学業で一定の成績を収める』、という条件が課されています。
この背景として『学生時代の文武両道が確固たるステータスとして認められ、社会人やプロ選手として世にでるときにとても有利に働く』、というアメリカ社会の風潮があります。

青柳がアメリカでATとしてお世話になっていた学校の学生アスリートには、文武両道を実践している子たちが周りにたくさんいました。
2020年のオリンピックに向けて、学業だけではなくスポーツの評価がもっと上がるような仕組みづくりを国が主導で行うべきです…
その活動を陰ながら応援できる、トレーナーであるように青柳も頑張って行きたいです!

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