トレーナーの待遇と将来のカタチ

おはようございます、アスレティックトレーナーの青柳陽祐です。

今日の記事では、インディアナ州立大学の大学院生が書いた、インターンATについて問題提起をしているブログ記事と、NATAが最近発表したアメリカの公立高校におけるATの雇用状況に関するレポートをご紹介します。

今回の参考資料:

Intern Athletic Trainer Positions are Insulting and Detrimental to Our Profession
http://at4at.weebly.com/blog/intern-athletic-trainer-positions-are-insulting-and-detrimental-to-our-profession

Athletic Training Services in Public Secondary Schools: A Benchmark Study
http://natajournals.org/doi/pdf/10.4085/1062-6050-50.2.03

Intern ATの問題点とATの雇用状況

インターンはただの下積み労働か?それとも良い経験なのか?

インターンはただの下積み労働か?それとも良い経験なのか?

インターン(Intern)と言うと日本語では、就活生の”Internship”(就業体験)や研修医(注:正確にはインターンではなく、レジデント”Resident”)というイメージが強いのですが、Intern ATは大学・大学院を卒業して、ATC資格を取得からの経験が少ない(約2年以内)の人が、経験を積むために用意されたポジションであると捉えられてきました。

しかしブログ記事では、このポジションがATにとっては侮辱的(Insulting)であり、業界の発展にとっては大きな不利益(Detrimental)であると語気を強めています。

では何が問題なのでしょう?
内容を要約してみました…

Intern ATの年収は、(注訳:学校の長期休暇を除く10ヶ月間で)約$7,000~18,000の範囲で、全く同じ資格を持つ経験1~2年のATの平均年収である$38,214の半分以下となります。
しかも仕事内容と責任は常勤ATと同じように求められる場合もあり、Intern ATの契約は単年で切れてしまうことがほとんどです。

多くの学校は、Intern ATへ健康保険や学校内にある住まいも提供します。
しかし一方では、”私達の素晴らしい環境で経験を積むことが、Intern ATにとって最大の報酬である”と思いあがり、薄給のみを与える学校があるのも事実です。

常勤ATの責務を果たす人を探しているのであれば、雇用する側は常勤でATを雇うべきです!

次に全米の公立高校(Secondary School)を対象にした調査を見てみましょう…

今から十数年前は、約42%の公立高校がATを雇用している状況でしたが、2013年では約70%まで向上しました。
雇用形態は70%のうちで常勤が37%、非常勤が31%、日雇いが2%となっていた。

さらにそのうちの27%は、ATを病院や理学療法クリニックからの派遣でまかない、48%の学校で全てのスポーツ活動にATがついているという結果になった。

トレーナーができること

皆さんのつながりはどんなものでしょうか?

皆さんのつながりはどんなものでしょうか?

これらを見て皆さんは、何を思ったでしょうか…

僕は、上記のようにATの待遇に関する問題が提起されることは、とても良いことだと考えています。
どんな人・事にも当てはまることですが、何の障害や失敗もなく発展、成功したりすることはほとんどないと言えます。
そもそも、問題提起や批判が起こるということは、それに対する社会的な関心や期待の高まりの裏返しで、なんらかの解決策(良いか悪いかは別にして)が提示される良いきっかけである、と僕は思っています。

アメリカでは常勤のATとして雇用されれば、ほとんどその仕事のみで生活できる一方、Intern ATの収入が常勤の半分で仕事量・責任は同じ、2年目以降の契約更新や手当は無しというのは、かなり不当な扱いであると考えられます。
しかし、Intern ATがいわば下積みのようなポジションで、金銭の代わりに住宅や医療保険などの手当があり、最低限の生活ができる。
さらにそこで1・2年経験を積めば、同じ職場で常勤の契約を結べたり、他の契約の良いきっかけになれば、駆け出しのATが就くポジションとして、Intern ATは決して悪くないと思います。

むしろ僕はアメリカの環境が羨ましくもあり、逆に贅沢すぎるとも考えています。
この状況は日本でのトレーナーの地位と比べると、資格や職域に対する社会的認知度、法的保護や待遇など… 天と地の差です。
そもそもATとして働ける場所も少ないし、AT一本で食っていけるトレーナーはもっと少ないはずです。
でも、そこまで悲観する必要はないと思います。

最近では、学校教員の部活動顧問の荷重負担、スポーツ現場での安全確保や超高齢化社会の到来…など、トレーナーがその問題解決の一端を担うことができる分野が確実に増えています。
僕が理想としているのは、『個性を持ったスペシャリストの”横のつながり”を駆使しながら、助けが必要な人・現場をサポートできる』ということです。
例えば僕なら、障害予防・コンディショニングが専門ですが治療はできないし、ストレングスや栄養指導はできないので、治療家のAさん、S&CコーチのBさん、管理栄養士のCさんをご紹介できて必要なときはチームとして、クライアントさんをサポートできるということです。

つまらないしがらみ・こだわりは捨て、みんながものごとを分かち合って幸せになれる環境づくりを目指し、今日もちょっとずつ頑張ろうと思います!

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