筋肉の機能ってなに?

おはようございます、アスレティックトレーナーの青柳陽祐です。

前回の記事でちょろっと書きましたが、今月始めに股関節の筋機能と安定化をテーマにしたセミナーで勉強をさせていただきました。
多くの学びとエクササイズに関するヒントがたくさんあって消化不良気味ですが、少しつづみなさんにもわかりやすいように内容をまとめて行きます…

今回の資料:

1.Effects of local vs global stabilizer strengthening in chronic low back pain
http://www.researchgate.net/publication/236582418_Effects_of_local_vs_global_stabilizer_strengthening_in_chronic_low_back_pain

2.NASM Chapter 9 – Core Training Concepts
http://www.thehealthygamer.com/2013/05/31/chapter-9-core-training-concepts/

3.石井 完厚:筋機能に基づく股関節安定化アプローチ

今回は”筋肉の機能”というのがテーマになります。
青柳も大学時代の機能解剖学の講義で、筋肉の起始、停止、機能、神経支配についてイヤというほど学んできました。
その時に学んだ”筋肉の機能”というのは今考えてみると…

『筋肉Aが解剖学的肢位から、関節を動かすためにどのような働きをするか?』

というのに着目していたような気がします。
この捉え方は筋肉Aを主動筋(Prime Mover, Global Mobilizer)として考えたものです。

でも冷静に考えてみると、日常・スポーツの動作は解剖学的肢位から起こることはまずありません。
特に多くの筋が交わり、その関節が上方・下方の関節機能に大きな影響を及ぼしやすい、股関節、体幹部や肩関節に関しては、決してこのような捉え方では本当の筋肉の機能というのは理解できないのではないかと思います。

筋肉の機能とは?

腸腰筋の機能は股関節屈曲ですが… http://www.stretchify.com/wp-content/uploads/2013/08/iliopsoas.gif

青柳がセミナーを受講して思ったことは…

『筋肉Aの機能は、”Mover”と”Stabilizer”の2つで考えるべき』

というものです。

Mover:
主にアウターマッスル・表層筋と呼ばれるもの。
単一・複数の関節を大きく・力強く動かすことができるが、各関節の安定させる機能はインナーマッスルに比べて劣る。

Stabilizer:
主にインナーマッスル・深層筋と呼ばれているもの。
アウターマッスルが関節を動かしているときに、単一・複数の関節が動揺しすぎないように安定させる。

まず筋肉Aが”Mover”と”Stabilizer”の2つの機能を果たしている、わかりやすい例が上の腸腰筋です…

腸腰筋は強力な股関節屈曲筋ですが、腸骨筋と大腰筋が股関節のところで、大腿骨頭が寛骨臼から(特に股関節の伸展位で)前方に動揺し過ぎないように覆いかぶさっているのが確認できます。
さらに腸腰筋が、腰椎の機能に深く関わることもよく知られています…

”Stabilizer”って?

腰椎の屈曲です…

腰椎の屈曲です…

さらに”Stabilizer”は、”Local”と”Global”に分けることができます…

Local Stabilizer-中和筋 [3]:
関節に直接付着し、主に単一の関節の安定を担っている。
腰部では圧縮、剪断、ひねりなどのストレスから椎間関節を保護する。[2]

Global Stabilizer-体重支持筋 [3]:
腰部では主に、骨盤から脊柱に付着している。
上肢から下肢への力の伝達をしながら、腰椎骨盤帯の可動域をコントロールする。[2]

関節が安定するというのは”関節が中心軸を保ったまま動く [3]”と先日のセミナーでは教えていだだきました。
腰椎の屈曲を例に考えてみました…

上のイメージ左側の屈曲では、腰部の中和筋(多裂筋など)の働きにより中心軸を保っています。
さらに体重支持筋(腰方形筋や内腹斜筋など)が、腰椎の可動域をコントロールしています。
これらの働きにより、腹直筋や外腹斜筋などの強力な屈曲筋が働いても、大きく関節が動揺することがありません。
しかし右側では、中和・体重支持筋の働きが弱いため中心軸を保てず、椎間に余計な圧迫や剪断力が発生してしまいます。

また腰痛に関してお悩みの方が皆さんの周りでは多いかも知れませんが、”Stalizer”のトレーニングと慢性腰痛の症状改善について検証した研究では…

中和筋は全ての下肢と腰椎骨盤帯の動作の時に動員されるので、慢性腰痛の改善トレーニングの初期では、これらの筋を優先的に強化することが推奨される。[1]

痛みの軽減、被験者の主観的な機能改善の評価では、中和・体重支持筋両方のトレーニングが最も有効であった。[1]

脊柱の関節可動域の改善においては、体重支持筋のみのトレーニングが最も有効であった。[1]

というまとめがされていました。

インナーマッスル(Stabilizer、特に中和筋)を鍛えるということは、関節を安定させることにつながり、間接的にアウターマッスルの筋力・筋パワーを増大させることに貢献すると考えることもできると思います。

しかしインナーマッスルを鍛えるのは…

トレーニングをやる側:
『始めは使っている筋やその機能を意識しにくいので、トレーニング効果を実感しづらい』

トレーニングを指導する側:
『トレーニングの効き目をクライアントに実感してもらいづらく、結果が出るまで少し時間がかかる』

と言った理由があり、アウターマッスルを鍛えることが優先されがちですが、ウォーミングアップやトレーニング中の休憩時間に少しでも取り込んでみてください…

僕も個人的に、股関節のインナーマッスル(Stabilizer)のトレーニングを継続していますが、スクワット後のもも前の疲れ方が以前より軽くなったという実感を得ています…

You may also like...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA